どーもヤマジです。
私はドイツで日本語教師をしているのですが、間接教授法、つまり日本語を学習者の言語(私の場合はドイツ語)で説明しながら教えるスタイルです。
意味の似た単語や文法を説明する際に、「比較する」ことは避けられません。また日本語の授業でなくても、日常の何気ない会話においても「比較する」ことの頻度は高いです。(例えば、「あっちのスーパーの肉の方が安かったよ」とか「こっちのビールの方がウマい」など)
今までのドイツ生活を振り返ってみると、「比較級けっこう使ってんなぁ」とふと思ったので、今回はドイツ語の比較級とついでに最上級の使い方を例を交えて解説していきたいと思います。
比較級と最上級
ドイツ語では
比較級
形容詞+er
最上級
am 形容詞+sten
というのが文末での基本形です。が、不規則な形になるものも含めるとザックリ3つのパターンがあります。
・☝に挙げた規則的なパターン
・母音[a],[u],[o]のいずれかが含まれる形容詞のパターン
・gut(良い)viel(たくさん)gern(是非、好んで)などの形容詞のパターン
一つずつ順に見ていきましょう。
原形 | 比較級 | 最上級 |
---|---|---|
billig (安い) | billiger | am billigsten |
schnell (はやい) | schneller | am schnellsten |
lecker (おいしい) | leckerer | am leckersten |
圧倒的規則性。学習者フレンドリーなパターンです。ドイツ語の場合この規則的なのが多いので迷ったらこの形にすれば、大体正解です。
比較級にすると語尾に[r]がつきますが、発音するときこの[r]は「ア/ァ」のように読まれます。[r]の発音について詳しく知りたい人は【ドイツ語発音】Rの発音方法の図解説明とできない時の対処法を読んでください。
原形 | 比較級 | 最上級 |
---|---|---|
alt (古い) | älter | am ältesten |
klug (かしこい) | klüger | am klügsten |
groß (大きい) | größer | am größten |
hoch (高い) | höher | am höchsten |
母音[a][u][o]が含まれる形容詞は、ウムラウト化されて[ä][ü][ö]に変化します。ウムラウト化は、単語に追加された[i]や[e]が発音しやすいように起こる現象です。比較級の[er]や最上級の[sten]の部分がウムラウト化の引き金になっています。
余計なマネを・・・と思ったかもしれませんが、日本語の「かぜ」と「上(かみ)」が合わさったときに、言いやすいよう「かぜかみ」じゃなくて「かざかみ」になるのと似た理屈です。メンドクセー
「いやそもそもウムラウトどう発音すんだよ!」って人は、【ドイツ語発音】3つのウムラウトの発音方法:ほぼカタカナ発音でOK」を読んでみてください。
原形 | 比較級 | 最上級 |
---|---|---|
gut (良い) | besser | am besten |
viel (たくさん) | mehr | am meisten |
gern (是非、好んで) | lieber | am liebsten |
完璧な不規則変化ですね。こればっかりは暗記しかないですが、英語でもgoodがbetterでmanyがmoreになりましたよね。あれと一緒です。原型を全く留めていない不規則変化はちょっとしかないので思考停止してサクッと覚えましょう。この表の3つをおさえておけば大丈夫な気がします。ちなみに一番下のgernは厳密には形容詞ではなく、副詞です。
比較級を使う上でかかせないのは、「よりも」の部分、英語でいうところの「than」ですよね。
ドイツ語で「than」に相当するのが als です。
以上のことを踏まえて、いくつか例文を作ってみると
このビールはボルビックより安い。
Dieses Bier ist billiger als Volvic.
実は日本はドイツより大きい。
Eigentlich ist Japan größer als Deutschland.
ペプシの方がコーラよりもイイ。
Pepsi ist besser als Cola.
というカンジです。構造的には英語とほぼ一緒なのでカンタンですね。
副詞としてしか使えないgern(比較級 lieber)は自分の好む行動や行為、考えを表すときに使います。
読書が好きです/趣味です。
Ich lese gern.
料理するのが好きです/趣味です。
Ich koche gern.
人間よりも犬の方が好き。
Ich mag Hunde lieber als Menschen.
副詞
動詞を補足説明する品詞。日本語に当てはめると例えば「速く走る」の「速く」が副詞ということになります。日本語では副詞の語尾は「ーく」か「ーに」のどちらかです。例:速く、綺麗に etc.
形容詞
名詞を補足説明する品詞。日本語に当てはめると例えば「速い車」の「速い」が形容詞です。日本語では形容詞の語尾は「ーい」か「ーな」のどちらかです。例:速い、綺麗な etc.
ドイツ語ではなんと副詞と形容詞は全く同じ形です。日本語や英語のように形を変化させる必要がないので、格変化とか男性中性女性名詞とかウンタラカンタラあるドイツ語にしては意外とアッサリしてます。
文末なら最上級はam 形容詞+stenの形です。特にメンドウなことはありません。
いくつか例を見てみましょう。
ここのシュニッツェル(うっすいトンカツみたいな料理)が一番ウマいね!
Das Schnitzel hier ist am leckersten!
え、私が一番年上??
Bin ich am ältesten??
何が一番いいと思う?
Was findest du am besten?
gut(良い)の最上級であるam bestenは、不規則変化ですが英語のgoodとbestと形が似ていると考えれば、スッと覚えられると思います。
noch 比較級 (もっと~)
Dieses Hotel ist noch besser als auf Fotos.
このホテル、写真よりももっといいカンジじゃん。
viel 比較級 (ずっと~)
Dieses Hotel ist viel besser als auf Fotos.
このホテル、写真よりもずっといいカンジじゃん。
noch 比較級もviel 比較級も意味的にはほとんど一緒です。あえて深堀りするなら、noch 比較級の方が比較対象のことを少し立てつつその上でもう片方が勝っていることを表しているのに対し、viel 比較級では比較対象との差をかなり明確にしている感じでしょうか。
たぶん
英語のeven 比較級 = ドイツ語のnoch 比較級
英語のmuch 比較級 = ドイツ語のviel 比較級
なんだと思います。シランケド
あ、あれです。おそらく女性を褒めるときに正解なのがnoch 比較級で、メンドクサクなるのがviel 比較級です。
男:Du bist heute noch schöner als gestern!
(昨日も良かったけど)今日のキミは昨日よりももっと素敵だね!
女:ありがとう!
男:(´ω`)
男:Du bist heute viel schöner als gestern!
今日のキミは昨日よりもずっと素敵だね!
女:はぁ?昨日そんな酷かったかよ!?
男:(うわ、メンドクサ!)
まぁこんなこと言ったことないですケド。沈黙は金。
比較級
形容詞+er
最上級
am 形容詞+sten
不規則なのも少しありますが、基本的には規則的な作り方です。
また比較級に関しては、英語と非常によく似た構造なので、対訳に英語も書いといた方が案外覚えやすかったりします。
特に比較級は日常生活でもけっこう使う機会があるので、使用頻度の高い不規則変化の形容詞は覚えていて損はないです。
今回は文末の使い方を解説しましたが、いずれは格変化も必須となる名詞前の比較級・最上級の使い方に関する記事も書こうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。