どーもヤマジです。
ドイツ語を勉強していると「(‘Д’)??」となるのは、「ウムラウト(Umlaut)」の発音ではないでしょうか。
ドイツ語のウムラウトは「ä」「ü」「ö」の3つで、点々なし「a」「u」「o」とは発音が異なります。
英語にはない記号なので面食ってしまいますが、ぶっちゃけ発音的に難しいのは「ö」だけです。「ä」と「ü」は、いわゆるカタカナ発音で伝わります。
とは言ったものの、誤解のないように付け加えますが、ドイツ語は全てがカタカナ発音で伝わるわけではありません。今回の記事で例に出す単語もカタカナ発音だと伝わるか微妙な部分はアルファベット表記のままにしてあります。
ヤーヤー言っとりますが、本題のウムラウトを日本人的に発音の容易さの順で並べると、

ウムラウトの発音難易度
みたいな感じです。私見ですが。
今回の記事では、とりあえずカンタンな方から解説していきたいと思います。
また、実際に現在ドイツでドイツ語を使って生活している経験を踏まえて、「伝わるかどうか」に焦点を当てて説明します。
äは日本語の「エ」でOK
はい、もう見出しの通りです。
「ä」を発音するときは、日本語の「エ」みたいな感じで言えば、99.999999%伝わります。
「それじゃあドイツ語の「e」と同じじゃねーのか」ってツッコまれるかもしれませんが、その通りです。ほぼ一緒です。
「ä」は「e」を発音するときよりも、口を少し大きく開けると言われたりしますが、状況や人によって「少し大きく開ける」ことの度合いはマチマチなので、あんまりここを意識しても無駄です。
しかも単語によってはつづり上は「ä」と「e」で違うけど、発音は全く同じという場合もあるので、この二つをガッツリ区別しようとするのは止めましょうや。
例えばこの2つの動詞です☟
hätten (habenの接続法二式, 英語のwould have的なsomething)
国際音声記号表記: [ˈhɛtn̩]
wetten (賭ける)
国際音声記号表記: [ˈvɛtn̩]
国際音声記号(International Phonetic Alphabet 略:IPA)とは、「この世の全ての言語の発音を1つの文字体系で表したろやないかい!」と息巻いた言語学者達の熱い想いによって作られた記号です。
今回のhättenやwettenのように見た目は違うけど、実際は発音が同じということもあるので、正確にどんな単語や言語でも共通の文字で真の音の姿を捉えることができるように考案されたスグレモノです。理論上は、ドイツ語だろうが英語だろうが日本語だろうがIPAだけで全ての単語の音が記述できるとされています(理想)。
しかし、ご覧の通りアルファベットが元になっているので、英語やローマ字の読み方などに慣れているとちょっとややこしいです。あと話者のその時の状況(激高してたり、酔っぱらっていたり、テンション高かったり、ふざけてたり)によって発音も大分変わるので、ぶっちゃけ音を正確に記述するのは無理ゲ―。
しかも言語学者によっては、音声記号の定義がちょっと違ったりするので、もうコレ良くね?ってなるダルイ記号です。コミュニケーションツールたる言語を研究する人間達のコミュニケーションがそもそも上手くいってねぇんじゃねえかと。
あえて言うならば、「e」よりもちょっと口元だらしなく/やる気ない感じで、唇を少し緩めた状態で開いて「エ」を言えば、もうそいつぁ「ä」です。
「a」の口の形で「e」を言うとかもありますが、普通に会話しているときとか、そこまで口を大きく開けたりしないので、あんま誰も気にしないです。「エ」っつっとけばいいです、こんなん。
例:
Äpfel (Apfel: リンゴの複数形) → エpfel
Aktivität (活動) → Aktiviテェt
Kämpfer (戦士、ファイター) → ケmpfer
ちなみに「eu」も「äu」と発音が同じで、こちらも「オイ」みたいに言います。
üは日本語の「ュ」(拗音の「ュ」)を応用しよう!
「ü」を発音するときは、カタカナの小さい「ュ」をイメージすると分かりやすいです。
例えば:
Tüte (袋) → テューte
lügen (嘘をつく) → リューgen
Münze (小銭) → ミュnze
のように考えると、かなり発音しやすくなるんではないでしょうか?実際この通りに発音すれば、ドイツ人にもバッチリ伝わります。
そしていつもより少し大げさに口をすぼめながら言うと、よりそれっぽく聞こえます。
語頭に「Ü」がある場合も、日本語の小さい「ュ」を使えばイケます。ただ日本語には「ュ」が語頭につく単語はないので、ちょっとだけムズイですが、5分もあれば言えるようになります。



試しにドイツ語の「üben(練習する)」を「ューben」と言ってみてください。
ホラ、言えた。
ただ間違っても大きい「ユ」は使わないでください。これだとドイツ語の「ju」のようになってしまい全く違う音になってしまうので。あくまで大げさに口をすぼめた「キュ」の後半部分の「ュ」です。
「u」の口の形でそのままドイツ語の「i」を発音するというやり方もありますが、本物の「ü」を聞いたことない人がこれをやると、「イー」と言いかねないので、せっかくなら日本語にある近い音「ュ」を使って練習してみてはいかがでしょう、というお話でした。
öは唇と舌の形を意識しよう!
3つのウムラウトの中で一番ムズイのが「ö」です。
なぜなら、他の2つとは違い日本語には全く存在しない、比較対象がない音だからです。こいつばっかりは我らが日本語に助力を求めるわけにはいきません。
したがって、自分で1からこの音を開発する必要があります。


ここで特に意識しなければいけないのは舌の形です。ウムラウトの「ö」では舌の両端が上あごの奥歯に触れた状態になっており、このとき舌の形が ʊ みたいに丸くなっています。普通の「o」の方は、舌がほぼ仕事をしてません。

ちなみに独和辞書でも、たまに「König (王)」なんかが「ケーニヒ」のようにカタカナ表記されていることがありますが、死んでも「ケーニヒ」とか言わないでください。まっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったく通じませんので。
あと同じ理屈で「schön (綺麗、良い)」も「シェーン」とか言わんでください。その発音は全然schönじゃないです。
他2つのウムラウトはカタカナ発音でも代用可能ですが、「ö」だけは何がなんでも「ö」としか表しようがないので、舌の形を意識しながら正攻法で覚えましょう。
そもそもなんでウムラウトなんてあるの?
ドイツ語のウムラウト ü ö ä は、後舌母音 u o a の亜種みたいなものです。
なんでこんな派生形が生まれたかというと、ズバリ単語を言いやすくするためです。より正確に言うと前舌母音 i e を言いやすくするためです。
後舌母音 u o aは、前舌母音 i eから発音の位置が遠く、後舌母音→前舌母音のような並びだと言いづらいというのが事の発端。
この問題を解消するため後舌母音がウムラウト化し、前舌母音に歩み寄るのです
ドイツ語の名詞 Kampf (戦い)が、-erがついたときに Kampfer じゃなくてKämpfer (闘士、ファイター、戦士)となるのもこの「言いやすさ」が原因だったというわけです。
日本語でも似たようなものとして 風(かぜ)+ 上(かみ)が 「風上(かざかみ)」になる現象があります。前舌母音が後舌母音に交替している点は、ドイツ語とは逆ですが、「言いやすさ」のために母音が変化しているのは同じです。
- 「ä」は、日本語の「エ」で大体OK。でも「äu」のときだけ「オイ」。
- 「ü」は、日本語の小さい「ュ」で代用可能。例えば「kü-」は「キュ-」で伝わる。
- 「ö」は、日本語の発音では代用不可能。「o」の口を作った状態で「e」を発音し、その際舌の形を ʊ のように丸くすぼめる。このとき舌の両端が上あごの奥歯に触れた状態になる。
- ウムラウトがあるのは、後舌母音→前舌母音の言いにくさを解消するため
以上です。
今回は、「伝わる発音」を日本語の発音を応用して説明しているので、厳密にはネイティブのものと異なることもありますが、そもそも外国人がメチャ多いドイツにおいては、ちょっとした違いなど伝わっちまえば全然許容範囲です。
「コイツちょっと訛ってんな」くらいにしか思われませんので。
この3つの内、少し手こずるのは「ö」だけです。ウムラウトを正確に発音できるかどうかで、伝わり具合が大分変ってくるので、ぜひ今回のやり方を実践してみてください。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございます。